日本は世界で最も睡眠障害が多い国の一つとされ、五人に一人が睡眠障害を抱えていると推測されております。かつては「眠らずに頑張ること」が美徳とされていましたが、近年では睡眠の重要性が見直されるようになりました。睡眠障害には「不眠」と「過眠」がある中で、今回は「不眠」について詳しくお話しします。
◇不眠のタイプ
・入眠障害 … 寝つきが悪い
・熟眠障害 … 眠りが浅い
・中途覚醒 … 夜中に何度も目が覚める
・早朝覚醒 … 朝の目覚めが早すぎる
・覚醒障害 … 目覚めが悪く、日中に眠気を感じる
◇不眠の影響
・日中のパフォーマンス低下
- 頭が働かない
- 集中力が続かない
・自律神経の乱れ
- ストレスが増え、イライラしやすい
- 体が常に緊張状態となり、疲れが抜けにくい
- 動悸、めまい、冷え、胃腸の不調などを引き起こす
・生活習慣病のリスク上昇
- ホルモンバランスが崩れる
- 肥満、糖尿病、高血圧のリスクが高まる
・メンタルの不調
- 気分が落ち込みやすく、うつや不安を感じやすくなる
- 些細なことでもネガティブに考えてしまう
・認知機能の低下
- 記憶力や判断力が鈍くなる
- 長期間続くと認知症のリスクが高まる
◇不眠の原因
複数の要因が重なって起こることが多いです。
①環境要因
- 騒音(機械音やいびきなど)
- 光(スマホや照明の光など)
- 温度や湿度(暑すぎ・寒すぎなど)
- 寝具の不適合(枕やベッドが合わないなど)
②生活習慣
- 寝る直前のスマホやテレビ(交感神経が優位になる)
- カフェイン・アルコールの摂取(覚醒作用・眠りが浅くる)
- 昼夜逆転の生活(体内時計の乱れ)
- 運動不足(適度な疲労がないと眠れない)
③心理的要因
- 仕事や人間関係の悩み(不安や考え事、怒りなど)
- 緊張やプレッシャー(試験や発表の前など)
- 「寝なきゃ」と思うほど眠れない(焦り)
④精神的な問題
- うつ病や不安障害(脳が休まらない)
- 自律神経の乱れ(リラックスできない)
⑤身体的な問題
- 痛み(歯痛や腰痛など)
- かゆみやアレルギー(アトピーや湿疹など)
- 睡眠時無呼吸症候群(いびきや呼吸停止)
◇鍼灸で対応できる不眠の原因
鍼灸が対応できるのは、主に③心理的要因、④精神的問題、⑤身体的問題です。
一方で、①環境要因や②生活習慣の改善はご自身の意識が重要ですが、問診を通じて自覚することで、自然と改善されることも少なくありません。
今回は、③心理的要因と④精神的な問題に対する東洋医学的な不眠治療についてお話しします。
(⑤身体的な問題については、別の機会にご紹介いたします。)
※鍼灸治療の適応なのか不明点がございましたら、お気軽にご相談ください。>>お問合せ<<

◇東洋医学における不眠の考え方
東洋医学では、心理的・精神的な活動を「神志(しんし)」と呼び、良質な睡眠にはこの「神志」の安定が欠かせないと考えられています。
また、「神志」の働きを司るのは五臓のうちの「心(しん)」であり、その作用が現れる場所が「髄海(ずいかい)=脳髄」とされています。

◇不眠の東洋医学的メカニズム
・気が頭部に昇りすぎる
入眠困難
・血が髄海に行き届かない
中途覚醒/熟眠障害/早朝覚醒/覚醒障害
・津液(水)の偏り(気血の巡りを妨げたり遍在させる、熱がこもりやすい)
入眠困難/中途覚醒/熟眠障害/早朝覚醒/覚醒障害
・心(しん)の不調
入眠困難/中途覚醒/熟眠障害/早朝覚醒/覚醒障害
心(しん)が安定し、髄海の環境が整うことで、神志が安定し、健やかな睡眠につながります。
これらの視点を踏まえながら、問診や身体全体の状態を確認し、気血津液・五臓六腑・経絡のバランスを総合的に判断し、適切なツボ(経穴)を選び、鍼や灸で身体に信号を送ることで、不眠の改善を目指します。